私はその傾いたまま扇のやうな形に擴がりながら、ところどころに赤だの黄だの白だのの花環に綺麗に飾られた、多くは眞白い大理石で出來た立派な墓が整然と立ち竝んでゐる墓地の全體を一目に見下ろせるやうな一角を選んで佇みながら、しばらくそれを眺めやつてゐたが、ふと女の方をふりむいて、「これぢやあ、さつき君がそこへ入らうといふのを僕の輕蔑した修道院なんぞも案外住み心地がいいかも知れないね?
と眞面目とも冗談ともつかないやうな調子で言つた。
しかし女は、私の云ふことを肯定するでも、否定するでもない、それでゐて何もかも呑み込んでゐるやうな、どちらかといへば羞しさうな微笑を浮かべながら、私の傍らに立つてゐた。