その人が死んでから、それまでその人の氣もちなんぞ少しも理解しようともしないやうな男だつたその夫が、いつか知らず識らずの裡にその人の不爲合せだつた事に氣がつき、自分が苦しめてゐたその妻をだんだん心から愛し出してそのため自らは反つて爲合せになつてゆく――と云つた、そんな心の目ざめを描きたいと思つたのだ。
しかし、實際のところ、そんなむづかしい主題は僕にはまだとても扱へさうもなかつた。
――が、今、かうやつてはじめて會つた君からいろいろ君ぐらゐの年頃の人の考へさうな人生の考へ方を訴へられてゐるうちに、何んだかいままでよりもその女主人公の氣もちがずつと分りかけて來たやうな氣がしてならないね。