六月のはじめは、この村はまるつきり人氣がなくて、何處もかしこも、花だらけだつた。
臆病な小鳥たちも、まだ人を恐れないで、よく私になついてゐたものだ。
或る日、まだ釘づけになつてゐる別莊の、入口の柵を押し開けて、無斷で、その草深い庭の中へはひり、白く塗つてある鐡のベンチに腰をかけながら、ぼんやりアンデルセンのコントを讀んでゐると、まるでその物語の中からのやうに、いきなり獸くさい臭ひがしてきた。
六月のはじめは、この村はまるつきり人氣がなくて、何處もかしこも、花だらけだつた。
臆病な小鳥たちも、まだ人を恐れないで、よく私になついてゐたものだ。
或る日、まだ釘づけになつてゐる別莊の、入口の柵を押し開けて、無斷で、その草深い庭の中へはひり、白く塗つてある鐡のベンチに腰をかけながら、ぼんやりアンデルセンのコントを讀んでゐると、まるでその物語の中からのやうに、いきなり獸くさい臭ひがしてきた。