或る日、まだ釘づけになつてゐる別莊の、入口の柵を押し開けて、無斷で、その草深い庭の中へはひり、白く塗つてある鐡のベンチに腰をかけながら、ぼんやりアンデルセンのコントを讀んでゐると、まるでその物語の中からのやうに、いきなり獸くさい臭ひがしてきた。
が、そのファンタスチックな臭ひがだんだん現實的になつて來たので、思はずあたりを見まはすと、何んと私の頭の眞上に、大きな栗の木の枝の一つが突き出てゐたつけが、それに栗鼠の奴が一匹登つてゐて、私の方をきよとんと見てゐるのだ。
讀書してゐる私を、居睡りでもしてゐると間違へて、何か惡戲をしようとしてゐたところを、まんまと私に見つけられたと言つたやうな、ばつの惡さうな顏をして!