夏の間、みんなでよくおしやべりをしにいつたあの栗の木、――さういふ私達の午後のために涼しい木蔭をつくつてゐてくれた、あの栗の木の下に、私は二三日前から、一人でもつて本や紙を一かかへ抱へていつては、そこで山蟻などを殺しながら、本を讀んだり、手紙を書いたりしてゐます。
こんな事を一週間ほども續けてゐるうちに自分の考へをやをら仕事の方へ向けて行かせようといふのが、私のいつもの手。
――きのふの午後も、今かうやつて貴方に手紙を書いてゐるこの木蔭に寢ころびながら、私はアベラアルとエロイィズの手紙の事を書いた本に讀みふけつてゐました。