折角お貸ししたが、そんなものを讀んでくれるかどうかと思つてゐたユウジェニイ・ド・ゲランの「日記」、そちらへ持つていつて毎日讀んでいらつしやる由、大變うれしく、「この日記には思想も感情も苦痛もこんなにある。
何んと人を夢みさせ、反省させ、生活させるものではないか。
いはば、忘れてゐる或メロディに何故かしら胸がゆすぶられて來るやうに、それは自分の裡に郷愁のやうなものを起させる」といふ、アミエルから貴方がお手紙の中に引いて來られた言葉は、いかにもこの日記に向はれてゐる貴方自身の靜かな姿を私に偲ばせてくれましたが、私はこの日記にはもう一種の愛讀者のある事――その愛する弟モオリスのために彼女自身は空しい生涯を送るのにも甘んじたこの美しい魂に對して思はず羨望の聲を洩らしたリルケのごときもののゐる事をも、貴方にお知らせして置きたい。