「唯生きて生けらぬと聞えよ」――さう、生きた空もないやうな思ひで男に訴へつづけた歎かひにも拘らず、彼女があの葡萄牙尼同樣に、「いと物はかなく、兎にも角にもつかで」、いたく年老ゆるまで生きながらへてゐたらしい事、しかし彼女らの死後さういふ皮肉を極めた運命をも超えて、彼女らの生のはげしかつた一瞬のいつまでも赫きを失せないでゐる事、常にわれわれの生はわれわれの運命より以上のものである事、――「風立ちぬ」以來私に課せられてゐる一つの主題の發展が、思ひがけず此處において可能であるかも知れないのを見、私は何か胸がわくわくするのを覺えてゐる位です。
が、それだけにまた一層悔やまれるのは、この仕事を前にして、私の身體がいまあまり好いコンディションに置かれてない事です。
恐らく氣候の變り目のせゐで、こんなに元氣がないのでせう。