此處は Happy Valley なんぞと外人が呼んでゐる小さな谷の上にある林の中の杉皮葺きのコッテエヂ、――林の中とはいへ、いまはもうすつかり冬枯れてゐるので、裸かの枝を透いて、下方の高原とそれを四方から遠卷きにした國境の山々、更らにその山向うにもう眞白になつた巓だけをのぞかせてゐる八ヶ岳などが、殆ど手にとるごとくに見えるやうなところです。
野村君が數日前やつて來るまで、僕はこんな山のなかに一人きりで暮らしてゐたんですからね、僕もなかなかがうきになつたでせう。
この頃は野村君と一しよに毎日薪割りをしたり、下の井戸まで水を汲みにいつたりして、半ば自炊生活をしてゐます。