その頃は、まだ何處にもいまのやうな官有林ができてゐず、わづかに赤松がまばらに立つてゐただけで、村から火の山の裾野は一目だつた。
吹きとばす石もあさまの野分かな
さういふ古人の句さながらに、昔噴き上げられて落ちてきた燒石があちこち草の中に見えてゐるきりの、果てしない裾野がこの村を過ぎる旅びとの足もとまで迫つてきてゐ、見あげると、ついもうそこに火の山の火口がちぎれちぎれに煙を飛ばせてゐる。
その頃は、まだ何處にもいまのやうな官有林ができてゐず、わづかに赤松がまばらに立つてゐただけで、村から火の山の裾野は一目だつた。
吹きとばす石もあさまの野分かな
さういふ古人の句さながらに、昔噴き上げられて落ちてきた燒石があちこち草の中に見えてゐるきりの、果てしない裾野がこの村を過ぎる旅びとの足もとまで迫つてきてゐ、見あげると、ついもうそこに火の山の火口がちぎれちぎれに煙を飛ばせてゐる。