いつもどつちの店で買はうかと、あなたとジャン拳をして決めたりした、あの竝んだ二軒の花屋の前にも、もうめつきり花が少くなりました。
お客ももつと少いのでせう。
夏のうちはその花屋の主人たちまでが、そんな私たちのジャン拳をにこにこしながら見てゐたものですが、この頃ぢや、もし私がその一方で買はうものなら、もう一方の主人は私にひどく無愛想な顏をして見せるんで、こつちももう花の好きな相棒もゐないしするから、「花なんか勝手にしやがれ」と云つた顏つきで素通りするきりですが、まだその片方の店先きにぶらさがつてゐる ICE & FLOWERS といふ招牌の文字だけは、否でも應でも私の眼に飛びこんで來るんです。