最初は外人といふものは、さすがに思ひ切つたところに別莊を建てるもんだなと感心してゐましたが、聞いて見ると、それは何も眺めがいいからといふためではなく、以前は毎年のやうに大きな山海嘯があつて、村のなかにあつた別莊などはいくつも流されたので、だんだんそんな丘の上のはうに建てるやうになつたのださうです。
毎朝、自轉車に乘つた少年達が、手紙だの、花だの、麺麭だの、野菜などを、そんな丘の上まで運んで行きます。
が、その少年達の中には、誰ひとりその丘の一番てつぺんにある別莊まで自轉車を乘りつけられる者はありませんでした。