しかし、或る夏のこと、その丘の一番てつぺんにある別莊に、一人の可愛らしい金髮の少女のゐる一家が住んでゐたことがありました。
その金髮の少女は毎朝いつも眞白なワンピイスを着て、自轉車にのつて手紙などを出しに丘を非常な速力で下りて來ますが、その少女は歸りにもそれと殆ど同じやうな速力で、その丘のてつぺんまで一氣にすうと上つて行つてしまふのでした。
少年たちは、野菜や、麺麭などを一ぱい積んだ自轉車に手をかけたままみんなぽかんとして、花の咲いた藪のなかに見る見る消えてゆくその眞白い後姿をいつまでも見惚れてゐるのでした。