髯もじやなフランス人の牧師の長く住んでゐる別莊のヴェランダは、いつの間にかその柱に山葡萄が捲きついて、その主人の髯みたいになりました。
それから、いつも笑ふと眞白な齒の見える若い奧さんのゐる、ドイツ人のドクトルが新しく引越していつた別莊では、そのヴェランダの手すりまでがすぐ眞白にペンキを塗られてしまひました。
それに引き代へ、そのお隣りの、いまにもヴェランダのこはれさうになつた荒れ果てた古い家には、もうすつかり齒の拔けたよぼよぼの老孃が、それもたつた一人きりで、いささか魔法使ひのお婆さんめいた暮らしをしてゐます。