夕方など、この森の奧からは、誰が吹かすともつかず幽かにフリュウトの音のやうなものが聞えて來ます……
なんでも歐洲大戰中ずつと、ドイツ人ばかりでこの森に集つて、他の部落とは全く沒交渉に暮らしてゐたさうですが、その時他の外人たちがこの森にそんな綽名をつけたのだと云ふことです。
それなりずつとこの森がドイツ人の部落みたいになつてしまつたやうでして、そのせゐか、私が散歩がてらその森の中にはひつて行くと、いつも熊笹の中から、嗄れた叫び聲をあげながら、跣足で飛び出してくる小さな子供たちの感じも、なんとなく野蠻です。