私はけふは何かいいことがあるぞ、それともけふしようと思つたことをするときつと好い結果になるぞ、とそんな好い氣分になつて、村の會堂の方へ近づいてゆくと、一臺の自轉車が柵のうちに乘り棄てられてゐて、會堂の中からヴァイオリンの調子を調べてゐるらしい、幽かな音がそれとなく洩れてゐた。
私はしばらく柵に凭りかかつて、パイプを吹かしながら、それが何か私の幸福の下準備をしてゐて呉れるかのやうに、好い氣になつて聽いてゐた。
それから二三日の間、私が夕方そこを散歩のついでに通り過ぎると、いつもきまつて同じ自轉車が置いてあつて、會堂の中からは同じやうに低いヴァイオリンの音が洩れてゐた。