さうしてその頃の自分にとつては、何處かしらない、遠い山脈にとりかこまれた、廣い平野のまんなかのちひさな町で孤獨な生活をしてゐるその詩人が、自分なんぞからははるかに遠いものとして、それゆゑ一層切なく、思慕されない日とてはなかつたのだ……
さういふことまで思ひ出せば思ひ出すほど、私はそのとき、その詩人の傍らにあつて、いかにも感慨深げに、默つたまま、その「青猫」の新らしい 〔e'dition〕 を手にとつて見てゐた。
夕がた近く、私達はその版畫莊を出て、また竝木のある裏通りを歩き出した。
さうしてその頃の自分にとつては、何處かしらない、遠い山脈にとりかこまれた、廣い平野のまんなかのちひさな町で孤獨な生活をしてゐるその詩人が、自分なんぞからははるかに遠いものとして、それゆゑ一層切なく、思慕されない日とてはなかつたのだ……
さういふことまで思ひ出せば思ひ出すほど、私はそのとき、その詩人の傍らにあつて、いかにも感慨深げに、默つたまま、その「青猫」の新らしい 〔e'dition〕 を手にとつて見てゐた。
夕がた近く、私達はその版畫莊を出て、また竝木のある裏通りを歩き出した。