だが、そのころの私には詩を書くことはもはや至難ことに思へてゐた。
のみならず、いつもの親しい萩原さんとはすこし異ふやうに見える、その過ぎし日の「青猫」の詩人を、――その昔あれほど自分が傾倒してゐたその憂鬱の詩人を、そのときまざまざと自分の前にしてゐることが、なんとなく私の心を臆させてもゐた。
日の暮れがた、私達は急に人のこみだしたビヤホオルを出ると、萩原さんはいつもさうするやうに急にそそくさとわかれの言葉をいつて、そこに私だけを殘して、すぐ群衆の中へよろめき入るやうにして消えてしまつた。
だが、そのころの私には詩を書くことはもはや至難ことに思へてゐた。
のみならず、いつもの親しい萩原さんとはすこし異ふやうに見える、その過ぎし日の「青猫」の詩人を、――その昔あれほど自分が傾倒してゐたその憂鬱の詩人を、そのときまざまざと自分の前にしてゐることが、なんとなく私の心を臆させてもゐた。
日の暮れがた、私達は急に人のこみだしたビヤホオルを出ると、萩原さんはいつもさうするやうに急にそそくさとわかれの言葉をいつて、そこに私だけを殘して、すぐ群衆の中へよろめき入るやうにして消えてしまつた。