この古い物語はかういふのである。
「今は昔、池の尾と云ふ所に禪珍内供と云ふ僧住き……此の内供は鼻の長かりける五六寸許也ければ、頷よりも下てなむ見えける、色は赤く紫色にして、大柑子の皮の樣にしてつぶ立てぞ㿺たりける、其れが極く痒かりける事無限し、然れば提に湯を熱く湧して、折敷を其の鼻通る許に竅て、火の氣に面の熱く炮らるれば、其の折敷の穴に鼻を指通して、其の提に指入れてぞ茹、吉く茹て引出たれば色は紫色に成たるを、喬樣に臥して鼻の下に物をかひて、人を以て踏すれば、黒くつぶ立たる穴毎に煙の樣なる物出づ、其れを責て踏めば白き小虫の穴毎に指出たるを、鑷子を以て拔けば、四分許の白き虫を穴毎より拔出ける、其の跡は穴にて開てなむ見えける、其れを亦同じ湯に指入してざらめき、湯に初の如く茹れば鼻糸小さく萎み脧て、例の人の小き鼻に成ぬ、亦二三日に成ぬれば痒くして㿺延て、本の如くに腫て大きに成りぬ、如此くにしつゝ腫たる日員は多くぞ有ける……」
かういふ單にユウモラスな物語である。