筋としては面白く、いいと思ふが、作中の他の人物同樣、讀者まで一緒に知らさずに置いて、仕舞ひで背負投げを食はすやり方は、讀者の鑑賞がその方へ引張られるため、そこまで持つて行く筋道の骨折りが無駄になり、損だと思ふ。
讀者を作者と同じ場所で見物させて置く方がどうもいい、芥川君のやうな一行々々苦心して行く人の物なら、讀者はその道筋のうまさを味はつて行く方がよく、さうしなければ勿體ない話だといふやうな意味のことを言つたさうである。
それを聞いて、芥川氏は素直に受け入れて、「藝術といふものが本當に分つてゐないんです」と答へた。