池は東側で、小野さんの背中に当る。
小野さんはちょっと振り向いて鯉がと云おうとして、女の方を見ると、相手の眼は南側の辛夷に注いている。
――壺のごとく長い弁から、濃い紫が春を追うて抜け出した後は、残骸に空しき茶の汚染を皺立てて、あるものはぽきりと絶えた萼のみあらわである。
池は東側で、小野さんの背中に当る。
小野さんはちょっと振り向いて鯉がと云おうとして、女の方を見ると、相手の眼は南側の辛夷に注いている。
――壺のごとく長い弁から、濃い紫が春を追うて抜け出した後は、残骸に空しき茶の汚染を皺立てて、あるものはぽきりと絶えた萼のみあらわである。