彼はときどき立ち止まつて耳を傾ける。
そして彼の目はとうとう大きなフロックスの花のあたりを飛びまはつてゐる一匹の蝶を追ひはじめる。
……此の詩に於いて、詩人が「お前」と呼びかけながら描いたもう一人の彼自身の、生と死との間を彷徨してゐる姿、しかし後年の詩人におけるやうにいまだその二つのものが一體とならず、死の考へが生きんとする欲望を暗くしてゐるやうな、まだいくぶん感傷的な青年の姿には、しかし充分に後の日のマルテの悲痛なる姿を彷彿せしめるものがある。
彼はときどき立ち止まつて耳を傾ける。
そして彼の目はとうとう大きなフロックスの花のあたりを飛びまはつてゐる一匹の蝶を追ひはじめる。
……此の詩に於いて、詩人が「お前」と呼びかけながら描いたもう一人の彼自身の、生と死との間を彷徨してゐる姿、しかし後年の詩人におけるやうにいまだその二つのものが一體とならず、死の考へが生きんとする欲望を暗くしてゐるやうな、まだいくぶん感傷的な青年の姿には、しかし充分に後の日のマルテの悲痛なる姿を彷彿せしめるものがある。