そして彼女の囘想録を讀み了らうとする瞬間に誰しもの胸裡におのづから浮かんで來るであらう信濃の更級の里あたりの佗しい風物、――さういふ讀後の印象を一層深くするやうな結末を私は自分の短篇小説にも與へたいと思つた。
そこに私がこの「更級日記」を自分のものとして書き變へるための唯一のよりどころがあつたと云つてもいい。
「あづまぢの道のはてよりも、なほ奧つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを……」と更級日記は書き出されてゐる。
そして彼女の囘想録を讀み了らうとする瞬間に誰しもの胸裡におのづから浮かんで來るであらう信濃の更級の里あたりの佗しい風物、――さういふ讀後の印象を一層深くするやうな結末を私は自分の短篇小説にも與へたいと思つた。
そこに私がこの「更級日記」を自分のものとして書き變へるための唯一のよりどころがあつたと云つてもいい。
「あづまぢの道のはてよりも、なほ奧つかたに生ひ出でたる人、いかばかりかはあやしかりけむを……」と更級日記は書き出されてゐる。