就中、源氏物語を一揃へ手に入れることの出來たときなどは、几帳のうちに打臥したきり、晝は日もすがら、夜は目の覺めたるかぎり火を近くともして、それをばかり讀んで暮らしてゐるやうな熱心さであつた。
さういふ夢みがちな彼女にとつて、自分の前に漸く展かれだした人生はいかに味氣ないものに見えたことであらう。
が、その人生が一樣に灰色に見えて來れば來るほど、彼女はいよいよ物語に沒頭し、そしてだんだん自分の身邊の小さな變化をもいくぶん物語めかしてでなければ見ないやうになる。
就中、源氏物語を一揃へ手に入れることの出來たときなどは、几帳のうちに打臥したきり、晝は日もすがら、夜は目の覺めたるかぎり火を近くともして、それをばかり讀んで暮らしてゐるやうな熱心さであつた。
さういふ夢みがちな彼女にとつて、自分の前に漸く展かれだした人生はいかに味氣ないものに見えたことであらう。
が、その人生が一樣に灰色に見えて來れば來るほど、彼女はいよいよ物語に沒頭し、そしてだんだん自分の身邊の小さな變化をもいくぶん物語めかしてでなければ見ないやうになる。