が、その人生が一樣に灰色に見えて來れば來るほど、彼女はいよいよ物語に沒頭し、そしてだんだん自分の身邊の小さな變化をもいくぶん物語めかしてでなければ見ないやうになる。
私はいつもこの日記のそのあたりを讀むとき、その點に一つの重心を置きながら讀むことにしてゐる。
こちらがそんな氣持ちでそれに向つて見ると、日記のそのあたりで、彼女がつぎつぎに出逢ふところの三つの死――侍從大納言の女の死、乳母の死、それから姉の死の前後を描いてゐるところなど、非常に省略した筆ながら、それが反つて效果的に見える位、驚くほど生彩を帶びてゐるのが感ぜられて來る。