そんな物はかない日々のうちに、當時の女らしくときどき夢などに佛のすがたを見ては、信仰のない人間の不爲合せをはつとするほど衝動的に知らされ、その度毎にいままでのやうに物語のみに夢中になつてゐるやうな心境を棄ててひたすら信仰に生きようとも決意するが、いつのまにかそれも中途半端に終つてしまふ。
そのやうに女らしい迷ひと覺醒との間にどつちつかずに漂つてゐるやうな不安げな氣分が、その日記の後半ともなると、屡〻見出されがちになつてくる。
が、遂に彼女にも「物まめやかなるさまに心もなりはてて」物語のことなども何かに取り紛れて次第に忘れるやうな中年の日々が近づいてくる。