そのやうに女らしい迷ひと覺醒との間にどつちつかずに漂つてゐるやうな不安げな氣分が、その日記の後半ともなると、屡〻見出されがちになつてくる。
が、遂に彼女にも「物まめやかなるさまに心もなりはてて」物語のことなども何かに取り紛れて次第に忘れるやうな中年の日々が近づいてくる。
宮仕へもしたが、それもただ内氣な彼女にはつらく思へただけで、「光る源氏ばかりの人はこの世におはしけりやは」と漸つとの事で知つた後、彼女はそのときはじめて「人がらもいとすくよかに世のつねならぬ人」に見えた奧ゆかしい同じ年頃の男に出會ふ。