さういふ氣もちにさせられただけで、そのやうな一瞬間の心と心との觸れ合ひを感じ得られただけで、既に物語そのもののこの世には有り得ないことを知つてゐる彼女は、いかにも切ないが、一方、その心の奧で一種の云ひ知れぬ滿足を感ずる。
その後、彼女は宮仕へを辭し、或平凡な男と結婚し、何事もなかつたやうに靜かに一生を終へる。
いま私がここにその經過を語つて來たところのものは、半ば私の書いた短篇小説のそれであつて、「更級日記」の原文からはやや離れて來たものになつて來てゐるらしい事は私も認めないではゐられない。
さういふ氣もちにさせられただけで、そのやうな一瞬間の心と心との觸れ合ひを感じ得られただけで、既に物語そのもののこの世には有り得ないことを知つてゐる彼女は、いかにも切ないが、一方、その心の奧で一種の云ひ知れぬ滿足を感ずる。
その後、彼女は宮仕へを辭し、或平凡な男と結婚し、何事もなかつたやうに靜かに一生を終へる。
いま私がここにその經過を語つて來たところのものは、半ば私の書いた短篇小説のそれであつて、「更級日記」の原文からはやや離れて來たものになつて來てゐるらしい事は私も認めないではゐられない。