私は手にしてゐた參謀本部の地圖に大體黒髮山らしいものの印をつけておいたが、その山の中はまださほど深いとも思はれないのに、小さな杣道が多くて、私にはすぐその地圖が何んの役にも立たない事を知つた。
私はもうあてずつぽうにそれらしい山を探して見るより仕方がなかつた。
さうやつて少し歩いて見てゐたが、てんで見當がつかず、こんな工合では黒髮山を搜すことは先づ斷念した方がいいと思ひ、せめて歌姫の方へ出る舊道でも見つけようとして後戻りをしてみたりしてゐたが、どれがさつき通つて來た道かなんぞも分からなくなり、すこし困つた事になつてきたなと思つた。