この儘、この山中に迷つていつまでも自分がさまよひ續けてゐるやうな事にでもなれば、私は萬葉びとに考へられてゐたやうな、山に葬られた死者の死後の姿そつくりではないか。
ただあたりは若葉の明るい山で、私の上に一めんに黄葉が浴びせられるやうに散つてゐないのがちよつと興を殺ぐ。
と、そんな暢氣な事を考へながら、もうちよつと此の儘かうして自分をそんな死人に擬して山の中をさ迷つてゐて見たいやうな氣もしてゐるうちに、いくら歩いても同じところばかり歩いてゐるやうなので、私は一方ではなんだか本當に自分が佐保山の奧に迷ひ入つたやうな不安をさへ感じ出して來た。