數日前、千ヶ瀧にゐる友人が私のところに來ての話に、淺間山麓一帶がその氣候とか植物の分布状態から見るとスカンヂナヴィア地方に酷似してゐるといふ話が出て、それから話がスカンヂナヴィアの文學のことに移つて行つたが、私はそのときふと、芥川さんもその北方の文學をかなり愛讀せられてゐたらしいこと――いままで私があんまり氣にもとめてゐなかつたそんな一面に、はじめて氣がついた。
芥川さんはストリンドベルク、イプセンは勿論のこと、私の知つてゐる限りでも、ビヨルンソン、ラゲルレフ、ハムスンなどの作品は大抵讀破せられてゐたのである。
いまでも一部の人達に愛せられてゐるキイランドなどもお好きだつたらうと思はれる。