大へん好きでしたが、――こちらへ歸つてきてから、まだ一度も飮みません……」すこしをかしな言葉遣ひで、しかしいかにもにこやかな口吻で、獨りごとのやうに云うてゐるのは、その長いこと伊太利で暮らしてゐたらしい老婦人であらう。
私は自分の部屋から出ていつた。
隣室で、私なんぞがごそごそ物音を立てたりしてゐない方が、この村における二人の珍らしい短い滯在のためにはすべてが好い、――と思つたからである。
大へん好きでしたが、――こちらへ歸つてきてから、まだ一度も飮みません……」すこしをかしな言葉遣ひで、しかしいかにもにこやかな口吻で、獨りごとのやうに云うてゐるのは、その長いこと伊太利で暮らしてゐたらしい老婦人であらう。
私は自分の部屋から出ていつた。
隣室で、私なんぞがごそごそ物音を立てたりしてゐない方が、この村における二人の珍らしい短い滯在のためにはすべてが好い、――と思つたからである。