君は好んで、君をいつも一ぱいにしてゐる云ひ知れぬ悲しみを歌つてゐるが、君にあつて最もいいのは、その云ひ知れぬ悲しみそのものではなくして、寧ろそれ自身としては他愛もないやうなそんな悲しみをも、それこそ大事に大事にしてゐる君の珍らしい心ばへなのだ。
さういふ君の純金の心をいつまでも大切にして置きたまへ。
この頃君の寄こす手紙は、そんな詩をいい氣持で書いてゐた學生の頃とはだいぶ異つて、すこし不安で苦しさうだが、さういふ粗野な現實に辛抱づよく耐へてゐる君の姿が手紙のうちにもだんだんしつかりして來るやうに見えるので、大へん嬉しい。