(君も知つてゐるだらう。
去年とそつくり同じ姿で、相愛らず毛の茶がかつた、小さな犬を引張つて、帽子もかぶらず、ステッキを突いて、すこし背中を曲げながら、とつとつと向うから歩いてきた。
僕はなんだか氣輕にお辭儀でもしてちよつと好意を示したいやうな誘惑を感じながら、しかし默つてそのまま、彼とすれちがはうとした矢先き、ふいとその老外人の連れてゐる茶色の犬が頭に小さな怪我をしてゐるのを見つけて、思はず心持ち身をこごめながらその頭へ手をやつて、「怪我をしてゐますね?
(君も知つてゐるだらう。
去年とそつくり同じ姿で、相愛らず毛の茶がかつた、小さな犬を引張つて、帽子もかぶらず、ステッキを突いて、すこし背中を曲げながら、とつとつと向うから歩いてきた。
僕はなんだか氣輕にお辭儀でもしてちよつと好意を示したいやうな誘惑を感じながら、しかし默つてそのまま、彼とすれちがはうとした矢先き、ふいとその老外人の連れてゐる茶色の犬が頭に小さな怪我をしてゐるのを見つけて、思はず心持ち身をこごめながらその頭へ手をやつて、「怪我をしてゐますね?