いつか私が一生のうちに一册でもいいから哲學的な著作を殘して死にたいと思つてゐたその一高時代のことをうちあけた私に向つて、半ば同情されるやうに微笑されながら「それは、君、誰でも一高生の頃はカントよりも哲學的になるものだからね……」と警句で受けとられた芥川さんだつた。
そんな夢を見たのは、私がもう大學にはひつて一高の頃のそんな風變りな夢想などはそろそろと忘れ出してゐた時分のことである。
いつか私が一生のうちに一册でもいいから哲學的な著作を殘して死にたいと思つてゐたその一高時代のことをうちあけた私に向つて、半ば同情されるやうに微笑されながら「それは、君、誰でも一高生の頃はカントよりも哲學的になるものだからね……」と警句で受けとられた芥川さんだつた。
そんな夢を見たのは、私がもう大學にはひつて一高の頃のそんな風變りな夢想などはそろそろと忘れ出してゐた時分のことである。