いつの夏の末だつたか、鶴屋旅館の離れで、芥川さんと室生さんが、同宿の或る夫人のために、女持ちの小さな扇子に發句を寄せ書きなさつたことがあつた。
そのそばで少年の私は默つて見てゐたのである。
芥川さんはなんでもその扇面に、小さな細い字で「明星のちろりに響けほととぎす」といふ句をお書きになつた。
いつの夏の末だつたか、鶴屋旅館の離れで、芥川さんと室生さんが、同宿の或る夫人のために、女持ちの小さな扇子に發句を寄せ書きなさつたことがあつた。
そのそばで少年の私は默つて見てゐたのである。
芥川さんはなんでもその扇面に、小さな細い字で「明星のちろりに響けほととぎす」といふ句をお書きになつた。