そのうちに私は、この二人づれはひよつとしたら、夏休みの終りを前にそつと親達の目を盜んでこの人氣のないホテルに來て、別れを惜しんでゐる小さな戀人たちなのかも知れぬぞと考へだしてゐた。
もうそろそろ日が暮れだすので、迎への自動車が早くきてくれないと困るし、しかし、いつまでもかうして二人きりで居たいことも居たいし、といつたやうな遣瀬なげな表情が二人の顏に浮んでゐないこともない。
ホテルのボオイ達からもすつかり置き忘れられてゐるやうに見えるこの小さな客を、中でただ一人、よほど彼等が氣になると見えて、さつきから二度も三度もそのテラスに覗きにいつては、二言三言彼等に話しかけてゐる小さなボオイがゐた。