かうして彼がその生活の立てなほしに拙くも蹉跌して、かなしい歸郷をしたのは、四十四の秋であつた。
彼はしばらく郷里の家にゐたが、既に十歳と八歳とになつてゐた二兒を母に托して、單身上京し、暫く麻布三聯隊附近の崖の上にあつた乃木坂倶樂部といふアパートに假寓した*。
* 「一日辻潤來り、わが生活の荒蕪を見て、唖然とせしが、忽ち顧みて大に笑ひ、共に酒を汲んで長歎す」(「乃木坂倶樂部」小解)
かうして彼がその生活の立てなほしに拙くも蹉跌して、かなしい歸郷をしたのは、四十四の秋であつた。
彼はしばらく郷里の家にゐたが、既に十歳と八歳とになつてゐた二兒を母に托して、單身上京し、暫く麻布三聯隊附近の崖の上にあつた乃木坂倶樂部といふアパートに假寓した*。
* 「一日辻潤來り、わが生活の荒蕪を見て、唖然とせしが、忽ち顧みて大に笑ひ、共に酒を汲んで長歎す」(「乃木坂倶樂部」小解)