さう云つた焦躁が、少しづつリルケの上に襲ひ出してゐたやうに見える。
かう云ふ兩者の状態を考慮に入れて、シャアトル行のリルケの手紙を讀むと、その大いなる廢墟を前にした二藝術家の姿は、殊にそのカテドラアルの前に到着するや、急に險惡になつてきた空模樣の方をリルケが氣にしてゐるのを、ロダンが「カテドラアルの周りにはいつもこんな風が吹いてゐるのだ」とかなり烈しい語氣で語るあたりは、何とも云ふに云はれぬ小説的な效果を帶びて來るのである。
――さう云ふ情景を冒頭に置いて、その後の二人の氣持が漸次離反して行く悲劇的な經過を、短篇小説にしてちよつと書いて見たいやうな誘惑をすら私は感ずる程である。