しかし、そればかりぢやなかつた。
僕がわざわざあなた達を連れていつて見せようとおもつた、小さな牧場は、去年の秋まではそれでも牛が二三匹柵のなかでおとなしく草を食べてゐたのに、今年は雜草ばかりが蓬々と伸び放題に伸びてゐて、牛なんぞは影も形も見えなかつた。
――だが、最後に漸つとほつとしたのは、その空つぽの牧場のすこし先きの小川が、その上にあぶなつかしく架つてゐる木橋の上から覗いて見ても、一面に青々と繁殖した野芹にすつかり隱れてしまつてゐて、唯、氣持のいいせせらぎの音を立ててゐるきりで、その水の色さへ見せなかつたことだ。