Les jours s'en vont je demeure
さういふ時はそれでよかつた……だが、大川の上にあかあかと冬のきびしい夕日が照り、それが濁つた水の色と映り合ひながら、そこに何とも言ひやうのない、凄じいばかりの色感を生じさせてゐる時などは、私はちよつとそれを見ただけでも、何だかぞつと惡寒がするやうな、耐らなく不快な重苦しい心持になつてしまふのだ。
その時分は、私にはさういふ惡感が、私の足の下を物憂げに流れてゐる大川の、その赤いとも黒いともつかないやうな、濁つた色の不快さから來るものとしか感じられなかつたが、いまから思へば、それはそのせゐばかりではなく、その當時すでに私の中にこつそり潛在してゐた病熱の、あらゆる水といふ水を嫌惡する性質のためもあつたに違ひないのだ。