それから他の話をしてゐるうちに、道造君が、この夏また追分に行きたいがその滯在費を自分で稼げといはれてしまつたので、何か自分に出來る仕事はないでせうかと言ひ出しました。
丁度僕は或る編纂物のために誰かに手傳つてもらはうと思つてゐたところだつたので、丁度いいと思ひましたが、コッテエヂの一件ですこし旋毛を曲げてゐたので、いい復讐が出來ると思つて、面白半分に道造君をからかひ出しました。
そりや、君、昔の吟遊詩人のやうに、ひとつ竪琴でももつて、輕井澤の別莊地を「オオカッサンとニコレット」でも唄ひながら歩いたらいいぢやないか、一番君に似合ふよ、なんて言つてやつてゐるうちに、道造君がだんだん悲しさうな顏をしだすのに氣がつきました。