が、僕はなんにも喋舌るほどのことがありませんでしたので、殆ど默つて折口さん達のお話しするのを聞いてゐただけの事でした。
――源氏物語の事などが大ぶ座談の中心になりましたが、同席せられてゐた青野季吉さんなんぞは毎日六時間づつも讀まれて、それで八ヶ月かかつて全部お讀み上げになつたさうです。
まあ平安朝の文學を云々するのには源氏物語が一番大事なものでせうし、それを精讀してゐないと話になりませんのに、僕はまだそれすらところどころ走り讀み位しかしてゐませんので、結局默つてもゐたわけですが、――そんな話を聞いてゐるうちに、その源氏が猛烈と讀みたくなつて來て困つてしまひました。