(青野さんなんぞもさう仰つてゐられた。
それで僕もこつちは少々讀んでをりますが、――事實、折口さんのお話では、文章もずつとやさしくなつてゐるさうです、――それは一つは薫とか、總角の君とか、浮舟などの、やや近代小説にでも出てきさうな面白い性格をもつた人物が出てくるせゐでせうが、――折口さんなんぞにはさういふところが却つて物足りなく思はれるのでせうか、控へ目にですが、それよりも「若菜」上下を推賞せられて居りました。
それは折口さんの御持説のやうで、源氏物語の一番上りつめたところがその「若菜」で、そこらあたりをとつくりと讀むのが一番よいと、前にも僕に話して下すつた事がありました、――それは一昨年の夏でしたが、これから「ほととぎす」を書かうとしてゐたところでしたので、丁度手許にあつた湖月抄本とウエイレイの英譯とをちやんぽんに見ながら急いで走り讀みをしましたが、そんな怪しげな讀み方でも隨分面白かつた。