「は、どうもこれは……」ボオイは頭をかきながら、「……その展覽會なら、それはパアク・ホテルの方でございますが……」さう言つて、そのままお盆を手にして恐縮しながら引きさがつて行つた。
これが普通のお孃さんだつたら、こつちで却つて氣まりを惡がつて顏を赤くしながらそこそこにホテルを引上げて行くだらうに、そこは外交官のお孃さんだけあつて慣れたもので、平氣で其のまま其處の長椅子に二人で坐り込んで、ボオイの粗忽を愉快さうに笑ひながら、しばらくそのスモオキング・ルウムの壁の上におそらく二三十年前からかかつてゐるらしいスコットランド風の古ぼけた額などを眺めまはしてゐた。
さうして「BALLYHOO」なんといふ猥褻な雜誌で顏をかくしてゐる男が私であることもとつくに見拔いてゐるらしく、そのため私の方でまごまごしてしまつてゐるくらゐだつた。