若しも私たちが次のやうな言葉を絶えず思ひ出さなかつたならば、何物をも理解し得ないだらう。
「私はそこにぢつと立止まつてゐた、動かずに、見つめつつ、呼吸しつつ、形象と匂の彼方に私の思考とともに行かうとしながら……」――若しも私たちが絶えず、この追求し、欲望する精神を感じてゐなかつたならば……
リヴィエェルはざつとこんな工合に論じながら、更にプルウストのかういふ寧ろ形而上的な傾向がいかにしてもつと實證的な傾向に轉換して行つたか、そしてそれがあらゆるクラシックに共通するところの人間的要素をどんな風に彼の作品に與へてゐるか、と云ふことにまで説き及ぼしてゐる。