男は草の中から其処には一人の尼かなんぞいるらしいけはいを確かめると、頭を垂れた儘、もと来た道をあとへ引っ返した。
もう昔の女には逢われないのだと詮め切ると、それまで男の胸を苦しいほど充たしていた女恋しさは、突然、いい知れず昔なつかしいような、殆ど快いもの思いに変りだした。
なかば傾いた西の対の、破れかかった妻戸のかげに、その夕べも、女は昼間から空にほのかにかかっていた繊い月をぼんやり眺めているうちに、いつか暗にまぎれながら殆どあるかないかに臥せっていた。
男は草の中から其処には一人の尼かなんぞいるらしいけはいを確かめると、頭を垂れた儘、もと来た道をあとへ引っ返した。
もう昔の女には逢われないのだと詮め切ると、それまで男の胸を苦しいほど充たしていた女恋しさは、突然、いい知れず昔なつかしいような、殆ど快いもの思いに変りだした。
なかば傾いた西の対の、破れかかった妻戸のかげに、その夕べも、女は昼間から空にほのかにかかっていた繊い月をぼんやり眺めているうちに、いつか暗にまぎれながら殆どあるかないかに臥せっていた。