或野分立った朝、尼はその女のもとに菓子などを持って来ながら、いつものように色の腿めた衣をかついだ女を前にして、何か慰めるように、
「あなた様もどうして此の儘でいつまでも居られましょう」と言いだした。
「こんなことはわたくしとしては申し上げ悪いことですけれど、いまわたくしの所に近江からいささか由縁のありますものの御子息が上京せられて来ておられますが、そのものがあなた様のお身の上を知って、ぜひとも国へお伴れしたいと熱心にお言いになって居りますけれど、いかがでございましょうか、一そそのもののお言葉に従いましては。