漸く任が果てて、その冬のはじめに近江へ帰らなければならなくなったときには、郡司の息子はもうすっかり此の女に睦んで、どうしてもその儘女を置きざりにして往く気にはなれずにしまった。
女はそれを強いられる儘に、京を離れるのはいかにもつらかったけれど、しかし自分の余りにもつたなかった来しかたに抗うような、そうして何か自分の運を試めしてみるような心もちにもなりながら、その郡司の息子について近江に下っていった。
しかしその郡司の息子には、国元には、二三年前にめとった妻が残してあった。
漸く任が果てて、その冬のはじめに近江へ帰らなければならなくなったときには、郡司の息子はもうすっかり此の女に睦んで、どうしてもその儘女を置きざりにして往く気にはなれずにしまった。
女はそれを強いられる儘に、京を離れるのはいかにもつらかったけれど、しかし自分の余りにもつたなかった来しかたに抗うような、そうして何か自分の運を試めしてみるような心もちにもなりながら、その郡司の息子について近江に下っていった。
しかしその郡司の息子には、国元には、二三年前にめとった妻が残してあった。