一種言うに言われないほどの好い匂が、ときおりその夕闇のなかに立って、それがまだ鶯なんぞを寐つかせないでいるらしい。
西の対あたりから、それに雑って、つい今しがた少女の習い出したらしい琴の幼い調べが途絶えがちに聴えて来る。
――私はふとこんな美しい春の夕をさえあの御方はまあ山里にお一人でどうして入らっしゃるだろうかと思いやった。
一種言うに言われないほどの好い匂が、ときおりその夕闇のなかに立って、それがまだ鶯なんぞを寐つかせないでいるらしい。
西の対あたりから、それに雑って、つい今しがた少女の習い出したらしい琴の幼い調べが途絶えがちに聴えて来る。
――私はふとこんな美しい春の夕をさえあの御方はまあ山里にお一人でどうして入らっしゃるだろうかと思いやった。