――私はもうこのまま殿がいつお絶えになろうとも、自分自身は思い残すような事もあまりあるまいと思われたが、只、こうしていろいろな夢をいだいて私のところにやって来たでもあろう撫子がまあどんなに胸の潰れるような思いをする事だろうと、その事のみが気づかわれるのだった。
もう梅雨ちかいそんな或日、突然殿があの祭の日からはじめてお見えになられた。
私が空けたような顔ばかりして、いつまでも物を言わずにいると、「どうして何も言わないのだ」と、殿は私の機嫌をとるように言い出された。
――私はもうこのまま殿がいつお絶えになろうとも、自分自身は思い残すような事もあまりあるまいと思われたが、只、こうしていろいろな夢をいだいて私のところにやって来たでもあろう撫子がまあどんなに胸の潰れるような思いをする事だろうと、その事のみが気づかわれるのだった。
もう梅雨ちかいそんな或日、突然殿があの祭の日からはじめてお見えになられた。
私が空けたような顔ばかりして、いつまでも物を言わずにいると、「どうして何も言わないのだ」と、殿は私の機嫌をとるように言い出された。